著者の郷里・部落の二派抗争
どんな伝承か
約八〇戸ばかりの著者の郷里の部落は、狐持ち派と非狐持ち(白米)派に真二つに分かれるのが常だった。著者の生家を中心に五軒の分家と二軒の孫分家が血縁で団結し、その他の狐持ちの家々が小作関係で固まって一大勢力をつくる。他方、生家に次ぐ金持ちで草分けのN家を中心とする非狐持ちの勢力が対立した。神社の席順や寄附金から町長・国会議員選挙まで両派は常に反目し、自派に候補がなければ犠牲候補を立ててまで相手をたたき落とそうとした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・昭和(改訂版))
速水保孝『憑きもの持ち迷信―その歴史的考察』の改訂版。自ら狐持ちの家に生まれた著者が、つきもの持ち迷信による差別を内側から告発し、その歴史的基盤を考察する。序章で研究に志した動機・問題の核心・結婚に直面しての苦悩を語り、人権を脅かす実例として狐持ちにまつわる隔地心中、次々と破談になる三兄妹、隠岐の人狐解消決議、犬神が乳児を食ったと絶交、堆肥小屋に外道を飼うを挙げる。