つぎつぎと破談になる三兄妹
どんな伝承か
昭和二十七年五月に受理され、九月に処理された事件。島根県八束郡伊野村大字野里の高橋タツ(仮名)が、同じ村の吉田定造(仮名)を相手取り、差別待遇による人権蹂躙を訴え出た。タツの陳述によれば、家には三十歳の長男、二十七歳の長女、二十五歳の二女と年頃の子が三人おり、三年ほど前からいろいろ縁談があったが、家筋が悪いとか狐持ちの家だとかいわれて全部破談になってしまい困りきっているという。直前に破れたのは長男の縁談で、久多美村の娘の父親が調べに来て、高橋家は家筋が悪い、母親の里である大野村の川崎家も狐持ちだと近所で聞かされたためであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・昭和(改訂版))
速水保孝『憑きもの持ち迷信―その歴史的考察』の改訂版。自ら狐持ちの家に生まれた著者が、つきもの持ち迷信による差別を内側から告発し、その歴史的基盤を考察する。序章で研究に志した動機・問題の核心・結婚に直面しての苦悩を語り、人権を脅かす実例として狐持ちにまつわる隔地心中、次々と破談になる三兄妹、隠岐の人狐解消決議、犬神が乳児を食ったと絶交、堆肥小屋に外道を飼うを挙げる。