成績表と「狐持ちの子」
どんな伝承か
著者は大正九年、宍道から木次線加茂中駅の先にある神原村に、村一番で郡内一、二を争う大地主の三男として生まれた。小学五、六年の頃、学期末に成績を賞められて帰ろうとした著者は、嫉妬した級友に廊下の隅へ連れ込まれ、「えこひいきだ」「狐持ちの子、お前は狐を使っていい成績をとったんだろう」と罵られた。意味はよく分からぬまま、家に関わる不都合を言われたと直感し、著者は何も言えず逃げ帰った。これが狐持ち差別を初めて実感した体験だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・昭和(改訂版))
速水保孝『憑きもの持ち迷信―その歴史的考察』の改訂版。自ら狐持ちの家に生まれた著者が、つきもの持ち迷信による差別を内側から告発し、その歴史的基盤を考察する。序章で研究に志した動機・問題の核心・結婚に直面しての苦悩を語り、人権を脅かす実例として狐持ちにまつわる隔地心中、次々と破談になる三兄妹、隠岐の人狐解消決議、犬神が乳児を食ったと絶交、堆肥小屋に外道を飼うを挙げる。