成績表を巡る狐持ち罵倒
どんな伝承か
著者が「狐持ち」という言葉を最初に知ったのは、小学校の五、六年の頃であった。ある学期末、受持の先生が生徒各自に成績表を手渡し、一人ずつ成績を読みあげて、著者の成績が飛び抜けているとたいそうな褒めようをした。嬉しく面映ゆい気持で帰ろうとしたところ、二、三人の意地悪い級友に呼びとめられ、廊下の片隅に連れて行かれた。一人が「えこひいきだぞ、お前の家がおやかただと思っていばるな」と言い、続けてもう一人が「やい、狐持ちの子、お前の家は狐持ちじゃないか。狐持ちの子だから、お前も狐を使っていい成績をとったんだろう」と畳みかけた。著者は何も言えずにその場から逃げ帰ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
つきもの持ち迷信の歴史的考察――狐持ちの家に生れて(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・昭和(1953頃))
速水保孝『つきもの持ち迷信の歴史的考察―狐持ちの家に生れて』(柳田國男序)。自ら狐持ちの家に生まれた著者が、つきもの持ち迷信による差別・人権侵害を内側から告発し、その類別と歴史的背景を考察する。