湖中の妖怪に弄ばれた寡婦
どんな伝承か
神西湖の沿岸差海村の半農半漁の集落に、石飛ナカという四十歳ばかりの独り暮らしの寡婦がいた。大正五年の夏のある夜、戸締まりをして寝かけていると、台所の方から五分刈り頭の若い好男子が寄ってきた。茶緋の単衣を着て右手を懐に入れて肘を張り、肩を斜めに揺すぶる気取った風で、無言のまま枕元に座ってにやりと笑った。その眼は非常に魅力があり、ナカはたちまち魅せられてしまう。目覚めると男はいなかった。男は寡黙で陰気臭く、五体が腥かった。青年はその後も毎夜忍んで来たという。
原典より
前項の瀧姫行者の所から、西北二里の地點にある神西湖の沿岸差海村に、半農半漁の部落があって、それに石飛ナカと云ふ獨り暮らしの寡婦の四十歳ばかりなのがあつた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))