座敷を転がった真赤な火の玉
どんな伝承か
東京の石神井にある谷原は、落雷がきわめて多い土地だと言われていた。そこに住む横山という農家では、激しい雷雨の日の夕方六時ごろ、一家そろって夕飯をとっていた。突然、家の中がぱっと明るくなったかと思うと、真赤な火の玉が転がり込んできて、座敷の中をぐるぐると転がった。祖父母も親子も茶碗と箸を放り出し、抱き合ったまま息をのんで震え上がったという。語り手は当初、落雷の恐怖から座敷を火の玉が転がったように錯覚したのだろうと考えていたが、その後、信用できる人の話や学者の観察記録を読み、稀ではあっても実際に起こる現象だと知ったと書いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・昭和17年~23年(1942年~1948年))
本書は大正末から昭和中期にかけて記録された心霊現象の事例集である。著者・武久勇三は、死の瞬間に発せられる感情の「霊波」が電気化学的波動として伝播し、受信者の脳に作用して幻視・幻聴・予知夢を生じさせるという理論を展開している。実例としてパリ郊外の妻の臨終感応、長野県大町の情死事件での共通幻聴、東京での戦死知らせなど、検証可能な事例が豊富に記載されている。