卵を生んだ女房と天水桶の水死
どんな伝承か
寛政十一年の夏、六月の馬喰町七不思議には、人の身の上の奇異も数えられている。布袋屋という商人の裏貸家に住む女房が卵を生んだという話がその一つで、多分は袋子の類であろうが、当時は不思議な現象とされた。一匹の雌犬が二匹の雄犬と同時につるんだことも不思議に見えた。また、商店の前に置かれた天水桶は夏には水がかれてほとんど水がなかったが、四つになる小さな子が手に持った人形を桶の中に落とし、取ろうとして逆さまに落ちて死んだ。天水桶で水死したというのが不思議だという。さらに、喧嘩をした若者たちが仲人の仲裁で酒を酌み交わした後、再び喧嘩をして互いに傷を負ったことも、和睦の後の喧嘩は珍しいとして数えられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。