下女とともに鳴り騒いだ池袋の女
どんな伝承か
江戸の末に広く語られた世間話に、池袋の女がある。旗本か御家人の家に雇われた下女が主人に犯され、その直後から屋敷に石が降り、道具が宙を舞い、家鳴りと震動が三日ほど続いた。修験者の祈禱も効かず、釜の蓋が浮いて飯に火が入り、天井から土塊が落ちて汁が使えなくなる。隣家では何も起きない。古老に促されて素性を尋ねると、下女は池袋村の出だとわかった。暇を出したとたん騒ぎはやみ、人々は狐憑きだ、村の氏神の祟りだと噂した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。