本所に夜ごと響く狸囃子
どんな伝承か
本所七不思議に数えられる狸囃子は、鼓を打つような音が夜どこからともなく聞こえてくるというものである。宅地の造成が進む町はずれで聞かれることが多く、大名屋敷や武家屋敷では特によく耳にしたという。戸板と障子が二重になった造りの隙間を風が吹き抜けるために鳴るのだ、という説も出された。同じ音は麻布の広尾ヶ原にも伝わり、いずれも土地の境目にあたる場所で語られる点が共通している。大勢が同じ音を聞く共同幻聴とも考えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。