南割下水を先へ逃げる提灯の光
どんな伝承か
本所七不思議の一つ。夜中についたり消えたりする怪しい光を見たという話と、夜道を歩くと前方に提灯のような明かりが見え、近づくとぱっと消えてまた前に現れ、それを繰り返しているうちに自分の家に着いてしまうという話が伝わる。どちらも場所は本所の南割下水の近くとされる。紹介者は、照明の乏しかった時代には本当の闇があり、その中ではわずかな光も鋭く大きく見え、他に目のやり場がないぶんそこへ意識が集まる、一種の錯覚だろうと説く。光ではなく拍子木の音が同じように遠のいていく送り拍子木の話が混じることもあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考2-本所七不思議(西郊民俗・昭和46年以降(取材記事含む))
本書は江戸時代の東京・墨田区を舞台とした「本所七不思議」と呼ばれる怪談伝承7話、および山形県の火事予知現象を記録した民俗学的研究である。足洗い屋敷から置いてけ堀まで各話について、超自然的な解釈ではなく、当時の生活環境における光学的錯覚、音響現象、心理作用、自然現象として合理的に検証・再解釈している。幻覚、怨念、祟りなどとして民間で伝承された現象の背後にある科学的・心理的メカニズムを明らかにする点が特徴。