至誠殿の御宝石はラムネの玉だった
どんな伝承か
大がかりな詐術で世間を欺いた例に、のちに六年の刑を受けた「巣鴨の神様」岸本可賀美の事件がある。読売新聞の調べによれば、岸本はもと天理教の教師で、ある稲荷神社の神主のもとにいたころ、その神主が臨終に口走った予言めいた言葉を速記し、「お口先」と称して信者に崇めさせたのが始まりだという。岸本が開いた天然社の至誠殿には、金紐と金無垢の金具をあしらった桐の三重箱に納めた「御宝石」があり、病を癒す霊力を持つと吹聴されていた。だが岸本の拘引後、帝大の地質学教室が調べたところ、それはラムネの玉であった。曇って傷み色も変わっており、岸本自身も正体に気づいていなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年))
『心霊現象の科学』は、小熊虎之助が心霊現象を科学の立場から論じた研究書で、序とあとがきに昭和四十九年四月の日付がある。コックリ・自働書記・読心術・憑きものなどを心理学で説ける偽心霊現象とし、精神感応・交霊・千里眼・心霊物理現象を真実の心霊現象として心霊現象研究会の報告から吟味する。福来友吉が能力者とした三船千鶴子・長尾夫人・高橋夫人・三田光一の透視と念写は山川健次郎らの実験と照らして疑い、あとがきでは井上円了以来の研究史を概説する。