山崩れを声に予告された炭焼
どんな伝承か
雑誌「変態心理」の幽事考料に載った話。明治九年六月四日の夜、信州小県郡大門村の南にある木沢という深い山あいで、村の者二人が小屋で炭を焼いていた。前日からの豪雨が夜に激しさを増し、炉端の二人は言いようのない心細さに襲われた。そのとき戸外から何者とも知れぬ声が「逃げて行け」としきりに告げた。二人は七八町離れた同業者の小屋を思い出し、木の皮と茅を束ねた火を頼りにたどり着いた。そこで山の崩れる地響きが谷にこだまし、夜明けに戻ると南東の大岳が崩れて小屋も炭竈も跡形もなかった。二人はこれを大山祇の神の知らせと考えた。
原典より
夜が明けてから、先の小屋の場所へ行ってみたら、異(たつみ)の方の大岳が崩れて、その辺は一面の山と化して、小屋も炭竈も全く影が見えなかった。—— 心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年))
『心霊現象の科学』は、小熊虎之助が心霊現象を科学の立場から論じた研究書で、序とあとがきに昭和四十九年四月の日付がある。コックリ・自働書記・読心術・憑きものなどを心理学で説ける偽心霊現象とし、精神感応・交霊・千里眼・心霊物理現象を真実の心霊現象として心霊現象研究会の報告から吟味する。福来友吉が能力者とした三船千鶴子・長尾夫人・高橋夫人・三田光一の透視と念写は山川健次郎らの実験と照らして疑い、あとがきでは井上円了以来の研究史を概説する。