木津川へ誘う死に神の美人
どんな伝承か
福来博士が心理学講義に挙げた死に神の例。大阪市のある家に奉公していた女中が、悩みごとから木津川に身を投げようとしたが、主人に見つかって止められ、本人も思いとどまった。十日あまり後、昼寝をしていると何者かに呼び起こされ、目を開けると見慣れない服装の美しい女が立っていて、一緒にどこかへ行こうとしきりに誘う。手首をつかまれて梯子段の降り口まで引かれたところで大声を上げると、女の姿は消えた。その後、湯屋の帰りに再び女に会い、ついて行くと花の咲き乱れる谷を見下ろす所に出たが、ためらってまばたきをした途端、谷は消え、目の前を木津川が滔々と流れていたという。
原典より
彼女はどうしようかと暫時躊躇していたその刹那、ふと瞬(まばたき)をしたら、今まで谿谷と思っていたのは消えて、そこには木津川の流れが滔々として流れていたそうである。—— 心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年))
『心霊現象の科学』は、小熊虎之助が心霊現象を科学の立場から論じた研究書で、序とあとがきに昭和四十九年四月の日付がある。コックリ・自働書記・読心術・憑きものなどを心理学で説ける偽心霊現象とし、精神感応・交霊・千里眼・心霊物理現象を真実の心霊現象として心霊現象研究会の報告から吟味する。福来友吉が能力者とした三船千鶴子・長尾夫人・高橋夫人・三田光一の透視と念写は山川健次郎らの実験と照らして疑い、あとがきでは井上円了以来の研究史を概説する。