女売子の怨霊が祟る銀座の一角
どんな伝承か
銀座でコンパス、守中、天華堂と軒を連ねた一角に不祥事が続いた。守中が不渡りを出し、天華堂で迷宮入りの金塊盗難が起き、コンパスが火を出し、最後に天華堂まで焼けた。西銀座通りの老番頭によれば、そこには昔市場があり、それも焼けたという。市場には美しい女売子が大勢いたが、一人が売場主任に言い寄られ、逃げ回った末に思うがままにされた。やがて身ごもると男は堕胎を迫り、結婚を夢見ていた女と揉めた。そんな折、市場は原因の分からない火を出し、女は逃げ遅れて焼死体で見つかった。男は葬儀にも顔を出さない。浮かばれぬ怨みが今も祟るのだという。焼跡には天使像が残り、その翼の陰から女が現れて消えたと語る者もある。
原典より
本郷の根津権現近くに間借りしてゐた頃のことだが、或る空家に幽霊が出ると言ふので可笑しな好奇心から見物に出かけたことがある。—— 銀座六丁目の怪談(労働雑誌・1935年8月(昭和10年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
銀座六丁目の怪談(労働雑誌・1935年8月(昭和10年))
本書は1935年の労働雑誌に掲載された、昭和初期日本における2つの怪談話を収録している。第一話「ノシ烏賊との夜話」は、工場での労働災害に端を発した亡霊目撃事件であり、労働者の死亡とその後の心理的幻覚を描く。第二話「銀座六丁目の怪談」は、売春女性の被害と火事の祟りに関連する怨霊譚で、銀座商店街での連続不祥事を説明する民間説話的な解釈を示す。