西鶴の見た妖怪〈山姥の首〉
どんな伝承か
井原西鶴の『諸国ばなし』巻五には、河内国枚岡に住んでいたある老婆の話が記されている。この老婆と連れ添った男は十一人まで次々と亡くなったのに、老婆自身は八十八歳まで長生きしたという。夜な夜な枚岡明神の灯明の油を盗んでいたところを、気丈な弓の名手が矢を放って首を射抜くと、老婆は正体を現し、山姥の首は火を吹きながら天へ昇っていった。その後もこの首は夜な夜な現れて人々を驚かせ、姥が火に追われて三年生き延びた者はいないと伝えられている。
原典より
『諸国ばなし』の巻三には、吉野の山奥に「八畳敷の宝舟」、巻四には、障子二枚を両脇にはさんで羽にした天狗が登場し、巻五には、河内国は枚岡の、どういう因果か、一緒になった男が十一人まで、淡雪の消えるように亡くなったのに、自分…—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・現代(著述)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・現代(著述))
国文学者・阿部正路『にっぽん妖怪の謎―古代の闇に跳梁した鬼・天狗・河童・狐たちは生きている!?』。日本の妖怪を文化史・文学史の視点で論じる。第1章では西遊記・酒呑童子・両面宿儺・赤鬼青鬼などの鬼、石ノ森章太郎やナウシカ・未来の妖怪、地獄の辞典、ケンタウロスを扱う。