陸軍寮の遺体を削った正体
どんな伝承か
昭和二十年ごろ、大阪の郊外にあった鴻池新田の陸軍寮では、学徒動員された学生たちが五棟の建物に分かれて起居していた。六棟目は病院の分室にあてられ、その中に死体安置所が置かれていた。大阪市内の空襲は激しく、軍関係の負傷者が次々と運び込まれ、息を引き取る者も出た。遺体は三、四日ここに置かれたが、その間に大腿部のあたりの肉が大きくえぐり取られていることが何度かあった。学生たちは犯人を突き止めようと、柔道や剣道の有段者が夜の廊下に立った。怖さと怖いもの見たさが半々だったという。正体は近くの野良猫だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。