大坂立売堀・湧き出す土と飛来物
どんな伝承か
『新著聞集』奇怪篇に、大坂立売堀中橋町の玉置宇兵衛という者の借店にあった檜物屋の話が載る。承応年中のある月の六つ時、しばしば震動があった後、海土とも思われる土が二十荷ほど、どこからともなく台所の真中に湧き出した。人々が寄り集まって裏の空地へかき除けたところ、五つ時分にまた同じ分量が出現した。やがてしばらくの間は、天井の方から少しずつ粉土が降ったという。同じ店の婆が語るには、六つ前に布衣のようなものが一つ、どこからともなく飛来して檜物屋の屋根に落ちるのを見たとのことであった。土中や天井から砂が噴出し、その時刻は明方か暮方の六つ時前後であったとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。