化け猫事件(梅次の怪病)
どんな伝承か
大阪新町遊郭の楼で、遊女梅次が原因不明の怪病に苦しんでいた。楼主はお民という婆さんとともに深夜まで様子をうかがった。午前二時過ぎ、廊下の隅の五燭の灯が鈍く曇り、奥の間から梅次のうめき声が漏れる。三時近く、左の半面を電灯に向けた大きな斑猫がすっと現れ、楼主が声を上げた刹那、猫の眼が光り、煙のような速さで手水鉢と八手の陰に掻き消えた。駆け込んで襖の隙から覗くと、梅次は枕も崩さず安らかに眠っている。楼主は婆さんに固く口止めし、翌日から梅次を母屋の二階で寝かせることにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(明治時代後期(推定))
本書『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、明治時代に大文館編輯部により編纂された怪談集であり、化け猫、怨霊、大入道など多様な超自然現象を扱う。主要テーマは、社会的弱者(娼婦、下女、村娘)への虐待と階級差別に由来する呪いと復讐である。兵庫県と大阪府が舞台の中心であり、遊郭での憑依現象、精神病院での怪病、山間部での大入道の出現など、当時の社会構造と結びついた怪異が描かれる。