背に負うた女が鬼に変じる夜道
どんな伝承か
久武内蔵助の従弟の五月新三郎が、ある晩、小高坂の吉良親実の邸宅の傍を通ると、十六、七の色の白い女が一人立っていた。秦泉寺の者だが嫁ぎ先で捨てられ、母に一目会おうと逃げてきたが恐ろしくて困っていると言う。新三郎は送ってやろうと申し出、足を痛めたと聞いて背負った。半丁ほど行くと背は大盤石が乗ったように重くなり、振り返ると二本の角のある鬼の顔があった。首筋を掴まれて宙に浮いたが、刀を抜いて払い田の中へ落ちた。夜明け方、一挺の駕籠が来て、中の吉良左京之進に声をかけられると、新三郎はばったり倒れて死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・明治~大正時代(編纂・出版は20世紀前半推定))
宝蔵の短刀=怨霊と祟り(日本の怪談)/幽霊の自筆・船頭の霊/義人の姿と因果応報/土佐・各地の怪異/田中貢太郎の怪談