大風の日に黙って立っていた老婦人
どんな伝承か
三月八日、東京は午後一時ごろから天候が一変し、春先には珍しい西向きの突風が吹き荒れた。筆者はいつものように明治神宮の外苑を一時間ほど歩いて戻り、信濃町の停留所の角を曲がったところで横なぐりの風に襲われた。空の色は何とも言いようがなく嫌な色をしている。総理大臣邸の角を曲がって自宅の方へ入ると、坂の下の角に、長女の嫁ぎ先の母で七十二になるおすがが風を避けて立っていた。いつもなら笑って挨拶するのに、この日は押し黙ったまま門の見えるところまで来てじっとこちらを見つめ、心残りな様子で帰っていった。それから一月ほどして、おすがは急に亡くなった。
原典より
ごく最近の経験をお話ししよう。—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編者)・昭和中期~後期(推定1970年代~1980年代)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編者)・昭和中期~後期(推定1970年代~1980年代))
私は幽霊を見た=怖い怪異体験(東雅夫編)/人魂・鬼火・狐火/機関車・電車の怪/各地の幽霊目撃談/不気味な怪音と怪異