鴨居の上に浮かんだ大きな男の首
どんな伝承か
大正六年に溺死した詩人のうち、三富朽葉の遺体は一か月ほどして、今井白楊の遺体は二日目に浜へ上がった。長谷川時雨と夫の三上於兎吉が今井の通夜に行った帰り、三上は時雨を送ろうと赤城下の家まで来た。玄関の格子戸を開け、上がり框から奥をのぞくと、十畳座敷の鴨居よりずっと上に、顔の幅が一尺もありそうな大きな男の首が浮かび、こちらをにらんでいた。声を上げた途端に首は消えたが、その顔は確かに今井白楊だった。時雨は、今井とは三上より自分のほうが話が合ったから見えたのだろうかと語っている。
原典より
ところが、玄関の格子戸を明けて、上り框のところから奥を見ると、十畳の座敷の鴨居のずっと上に、顔の幅が一尺もあろうと思われる大きな男の首が現われて、こちらをにらんでいました。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。