詩人二人の溺死と台所・鴨居に現れた顔
どんな伝承か
大正六年、詩人の三富朽葉は母と銚子の犬吠崎の別荘で避暑をしており、親友の詩人今井白楊と、長谷川時雨の夫の三上於兎吉が訪ねていた。三上は歯痛で東京へ帰り、その翌日、泳いでいた今井が溺れかけ、助けようとした三富とともに大波にのまれて死んだ。同じ日、赤城下の路地裏の家に戻った時雨は、台所の板の間に今井の顔が現れて笑いかけ、すぐに消えるのを見た。夕方の新聞で二人の溺死を知り、時刻もちょうどその頃だった。さらに通夜の帰りには、自宅の座敷の鴨居のはるか上に、幅一尺もあろうかという今井の大きな首が浮かんでこちらをにらんだという。時雨はこの体験を、昭和三年八月の『主婦之友』の「幽霊と怪談の座談会」で語っている。
原典より
三富が今井と遊泳中に、今井が溺れかけたのを三富が救おうとして、大波にのまれてともに溺死したのです。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。