人魂を追撃す
どんな伝承か
石見国那賀郡和江浦の魚売りが、ある夜更けに隣郡の長久村から帰る途中、字離山という部落の田圃道にさしかかると、茶碗ほどの朱色の火の玉が転がりながら前方から来た。大いに驚いて天秤棒を振り上げて打ってかかると、火の玉は元来た方へ引き返し、地上二尺ばかりを飛んで逃げた。勢いづいて追いかけると、火の玉は同じ土地の神職宮内某の家へ飛び込んだ。外に立って様子をうかがうと家の中が急に騒がしくなり、老人の声で「今しがた夢に道端へ散歩に出ると、大きい男が棒を振り上げて打ちかかってきたので懸命に逃げ戻った」と語るのが漏れ聞こえたという。
原典より
石見國那賀郡和江浦の魚賣が、或る夜更けて隣郡の長久村から歸るとき字離山と云ふ部落の田圃路にさしかゝると、茶碗大の朱色の火の玉がコロガリ乍ら前方から来るので、大に驚き、天秤棒を振り上げて撃つてかゝると、火の玉は元来た方へ引…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))