一-7 子供の悲鳴
どんな伝承か
安来節で名高い宍道湖畔で、逢魔が時に旅の僧が道を急いでいた。道の先を導くように青い鬼火が舞い飛ぶのを見つけ、僧は念仏を唱えたが火は消えず、とある家の軒先に吸い込まれるように消えた。不審に思い家の前に立つと、家の中から子供の悲鳴が聞こえ、「変な坊さんの何かが追いかけてくる」と叫んでいた。僧は、鬼火の正体は遊んでいた子供の魂が知らぬ間に体から抜け出したものであったと悟り、自らの修行の足りなさを恥じたという。この旅僧は伊藤俊徳氏といい、現在は鹿児島市南洲寺に健在で、子供の魂がたそがれ時に体から抜け出すことは宗教的にあり得ると語っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖奇怪談集(山門王吉・昭和初期(昭和11年前後))
山門王吉による『妖奇怪談集』は、明治初年から昭和初期にかけて日本各地で報告された超自然現象と心霊現象を記録した怪談集である。本書は単なる創作ではなく、実話や伝聞に基づいた報告として編纂されている。便所の霊、消えた女、生霊の憑依、棺桶の浮遊、死者との遭遇など、多様な現象が描かれる。特に強調されるのは、女性の死(身投げ・轢死・虐待死)に伴う怨念と執念である。