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大渦に沈まぬ光江の棺桶

所在地長野県下伊那郡喬木村
登場林右衛門、光江、お京、お千代、油川家の当主(光江を死なせた)、蛇責めで死んだ娘、林右衛門の妻、林右衛門の娘(のちに発狂)
出典妖奇怪談集

どんな伝承か

天竜川の東、赤石山麓三十八か村の大庄屋を務めた喬木村の旧家油川家には狂女が絶えないといい、これはその由来とされる話である。明治初年、色好みの当主林右衛門は、浪人の娘で家に引き取って育てた十九歳の光江に迫ったが拒まれ、山腹の離れ座敷に閉じ込めて毎日青大将を放り込み、ついに蛇の中で悶え死なせた。棺を天竜川の弊天島の大渦へ投げ込ませたが、何日たっても渦の真ん中で回るばかりで沈まない。三十八か村の僧を集めて岸で供養すると、棺の蓋が弾けて蛇が四方へ逃げ、やがて棺は渦に呑まれた。林右衛門は正気を失って数か月後に狂い死にし、娘お千代も発狂したという。

原典より

投げこむなり、すぐに渦にまき込まれると思つて居た棺桶が、大渦の眞中で、廻轉してゐると云ふのであつた。—— 妖奇怪談集(山門王吉・1936年(昭和11年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

妖奇怪談集(山門王吉・1936年(昭和11年))

『妖奇怪談集』は、山門王吉が著し、東亞書房が昭和十一年七月七日に発行した怪談集である。序によれば、現代の実話に取材した新感覚の話を主とし、旧来の型の話を二篇添えたという。巻頭の「怪談コント一束」は闇の声や消えた女など七つの小話から成り、続いて白昼の銀座で死んだ友人にマッチを借りる「銀座の悪夢」、円タクに乗る娘の亡霊、トンネルの狂女から「生首を盗む女」まで七篇を収め、巻末に十銭文庫などの広告と奥付を載せる。

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