六 トンネルの狂女
どんな伝承か
西鹿児島駅発の列車乗務員筒井は、饅頭石トンネル付近で轢死した女の脚を目撃して以来、青い鬼火や女の狂った笑い声、車窓に迫る黒髪の女の凄惨な顔に繰り返し悩まされ、ついに神経衰弱となって退職を願い出た。饅頭石の死霊は鹿児島市ネオン街の女給石上民子で、その母親も娘の自殺を苦に発狂し同じトンネルで亡くなっていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖奇怪談集(山門王吉・昭和初期(昭和11年前後))
山門王吉による『妖奇怪談集』は、明治初年から昭和初期にかけて日本各地で報告された超自然現象と心霊現象を記録した怪談集である。本書は単なる創作ではなく、実話や伝聞に基づいた報告として編纂されている。便所の霊、消えた女、生霊の憑依、棺桶の浮遊、死者との遭遇など、多様な現象が描かれる。特に強調されるのは、女性の死(身投げ・轢死・虐待死)に伴う怨念と執念である。