これは私が実際に体験した、不思議な話ですわ
どんな伝承か
徳島県三好郡池田町の古泉重夫が自ら体験した話。戦時中の一七、八年頃、今の三好病院の東に自分の家があった。夜なか頃に帰ってくると、その上手に火葬場があって大きな木が生えていた。そこまで来ると急に目の前が赤くなり、ひょっと見ると大木が燃え、バリバリと音を立てている。電信柱にもたれて三〇分ほど見ていたが、それだけ燃えているのに不思議と煙が出ない。しばらくすると火はぐるぐる三回まわってぱっと消えた。家に帰って父に「今晩、焼き場でだいぶ焼いたかね」と聞くと「知らん」と言い、火事なら半鐘も鳴るはずだと取り合わない。翌朝早くに見に行くと火事の跡は全くなかった。父は狸に化かされたのだと片づけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。