泥まみれの神様の話
どんな伝承か
御降りがあったと言って幾度も押し戴いてから神棚に供え、一しきり夢中になって踊った。踊り疲れた頭でそっと神棚を見た踊子の一人は、御降り遊ばされた神様の姿があまりに変わり過ぎた恰好であることに気づいた。庭にまで出してもう一度見ても、やはり神々しい神様の姿とは見えない。そこでよくよく目をこすり、体全体を目にして見ると、神様とばかり思えたのは、泥まみれの紐の切れた草鞋であったという。
原典より
「ほら、御降りぢや!」「有難い!」 幾度となく押し戴いてから神棚に供へ、一しきり夢中になつて踊り、踊り疲れた脳でそつと神棚を見た踊子の一人は「おや?」と思つた。—— 阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末))
概観篇では御降り(御札降り)に関する騒擾、伊勢神宮への御蔭参り・抜参りを慶安・宝永・明和・文政・慶應と時代別にたどり、慶應のええじゃないか、阿波のええじゃないかへと展開。幕末阿波(徳島)の御札降り・群集乱舞・世直し的民衆運動を、各事例の冒頭に【日付】【場所】【人物】【状況】マーカー付きで網羅した民俗・世相史。