まだその頃は身延鐵道の引かれてない頃でしたから、水害
どんな伝承か
身延鉄道がまだ引かれていない頃、富士川沿岸の村々は水害に苦しんでいた。その頃、村端れの銀杏の大木に毎夜、四斗樽ほどの人玉がふわふわ絡みついているという評判が立った。血気の若者が大勢で様子を探りに出かけたが誰も正体を確かめられない。大酒飲みで一徹者の青年庄作は誰にも知らせず大木によじ登って夜を待ち、三つ又の先に大きな青い火の玉が浮いているのを見つけた。正体は自分の尻尾をつかんで左右に振る大きな狸で、庄作はまさかりで叩き落とした。古老は祟りを恐れて狸塚を作ろうと言ったが庄作は聞かず、その夜狸汁をこしらえたが誰も来なかった。旧家であった庄作の家はまもなく没落し、他国へ出稼ぎに出ることになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代)
松谷みよ子『現代民話考 11 狸・むじな』を小話単位で全376話収録。狸・むじなにまつわる現代の民話・怪異譚(化かし・化け)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明372話・市区町村判明317話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。