一条桟敷屋の馬頭の鬼
どんな伝承か
今は昔、一条の桟敷屋にある男が泊まり、傾城と臥していた。夜半ばかりに風が吹き雨が降ってすさまじかったが、そのとき大路を諸行無常と詠じて過ぎて行く者があった。何者だろうと戸を少し押し開けて見ると、丈が軒と等しい馬の頭をした鬼であった。恐ろしさに戸を掛けて奥へ入ると、鬼は格子を押し開けて顔をさし入れ、よく御覧じつるなと言った。男が太刀を抜き、入らば斬ろうと構えて女を傍に置き待っていると、鬼はよくよく御覧ぜよと言って去った。それより一条の屋敷には泊まる者がなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。