吉野の瞋恚に燃える鬼
どんな伝承か
日蔵上人が吉野の奥を行い歩いていると、丈七尺ばかり、身の色は紺青、髪は火のように赤く、頸は細く胸骨がさし出て、腹はふくれ脛の細い鬼が現れ、手を束ねて泣きやまなかった。何をする鬼かと問うと、鬼は涙にむせびながら、四五百年前は人であったが人に怨みを残してこの身となり、敵もその子孫も残らず取り殺してしまい、今は殺すべき者もいないと訴えた。瞋恚の炎は同じように燃えるのに敵の子孫は絶え、我が命は限りもない、こんな心を起こさなければ極楽天上にも生まれたものをと泣いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。