鬼と火の車
どんな伝承か
播州佐用郡の下三日月の近くに弥蔵という道楽者がいた。神仏嫌いで無茶ばかりし、村中から毛虫のように嫌われるのをかえって自慢にしていた。その弥蔵がふとしたことから重い病に倒れる。身体の節々が抜けるように痛み、一昼夜に六、七回も激痛が襲い、赤や青の鬼が苦しめに来ると狂人のようにわめいた。孝行息子の興市は西播の真宗の女同行二人を頼んで三日二夜の法話を聞かせたが甲斐なく、弥蔵は鬼が火の車を持って迎えに来たと叫び続けた。同行が帰る間際、長屋の間から白煙が上がり、紅蓮の火の車に乗せられた弥蔵が無数の鬼に引かれて消え、全身黒焦げで悶絶していた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(明治時代後期(推定))
本書『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、明治時代に大文館編輯部により編纂された怪談集であり、化け猫、怨霊、大入道など多様な超自然現象を扱う。主要テーマは、社会的弱者(娼婦、下女、村娘)への虐待と階級差別に由来する呪いと復讐である。兵庫県と大阪府が舞台の中心であり、遊郭での憑依現象、精神病院での怪病、山間部での大入道の出現など、当時の社会構造と結びついた怪異が描かれる。