闇夜の火車
どんな伝承か
島根県安濃郡大田村字新市に美濃佐七という刃物鍛冶がいた。ある夜更け、神田の板橋を渡って川の北岸の堤防道を歩き、稲田の中の小路を近道して帰る途中のこと。以前は農家の肥料堆が小塔のように並ぶ寂しい場所であった。三、四十間先の地上二、三尺のあたりを、火の色をした車輪がくるくる回りながら北の薬師堂の方へ進んでいく。やがて消え、小さな火光が三度現れては消えた。再び火の車がこちらへ来るので堆肥の陰に隠れると、今度は人の輪郭をした淡い光が近づく。大喝すると村内の女房で、薬師の横の家に放火しようとして坊主姿に遮られたと懺悔した。
原典より
島根縣安濃郡大田村字新市に美濃佐七と云ふ及物鍛冶があつた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))