海の妖獸牛鬼
どんな伝承か
石見国大田町字新前に、中屋の政五郎という紺屋の手間取りがいた。魚釣りが道楽で、季節のよいころは毎晩のように一里半離れた詫間村の字魚津の海岸へ行き、遠浅を渡って島に上がり竿を垂れていた。魚津は大国主命が仮に住んだと伝わる大きな洞窟が絶壁にある寂しい所である。当時、石見の海村では牛鬼の噂があり、濡女が先触れに現れて石か嬰児を抱かせるといわれた。ある夜、実際に濡女が現れたので政五郎は足半を手にはめて受け取り、投げ捨てて逃げた。追ってきた真っ黒な巨体と爛々と光る一眼から逃れ、農家に飛び込んで押入に隠れて助かったという。
原典より
石見國大田町字新前に中屋の政五郎と云ふ紺屋の手間をする人があつたが、魚釣りが道楽で、頃のよい季節には、毎晩のやうに、家から一里半ある詫間村の字魚津の海岸へ行いて、遠淺を渉り、島へ上って竿を垂れるのが常業のやうであつた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))