幻覚と思えぬ「火の車走る」
どんな伝承か
知切光歳の『鬼の研究』にこんな話がある。広島県豊田郡の御手洗港は瀬戸内海の大崎下島にある古い港で、昔はもっと賑やかであった。宝暦年間の月待の夜、その年の当夜は快晴で、宵のうちから好い場所を占めた連中が盃を交わしていた。東の空が明るくなり、観音岬あたりの海上が銀波を映して、いざ月の出と一斉に空を仰いだとき、どこからともなく車輪の音が近づいてきた。見ると炎々と燃え盛る火の車が、轟々たる音を立てて矢のような速さで東から西へ走り去り、それを曳く青鬼赤鬼の獰猛な姿が一同の目に焼きついたという。
原典より
鬼の話の発端として一一七一年に伊豆の八丈島へ漂着した鬼の集団のことを紹介したのを覚えておられるだろう。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・現代) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・現代)