鬼の腕に絞め殺された元侍
どんな伝承か
明治に入ったばかりのころ、浅草馬道に田宮義和という男が住んでいた。維新前は侍だったというが、赤茶けた片腕を一本持っていて、これを鬼の腕と称した。銭湯へその腕を持ち込み、手拭いを握らせて自分の体や顔を洗わせる。家を訪ねた者の話では、肩や腰を揉ませながら気持ちよさそうに昼寝をしていたそうだ。どうやって手に入れたのかを聞いた者はいない。ある年の冬、御用聞きが訪ねると、義和はその腕に首を絞められて息絶えていた。検視の役人が引き離そうとしても離れず、そのまま埋めたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・昭和中期(1977年頃))
ザシキワラシ(座敷童子)と福の神(怪談の世界)/遠野・東北の怪異伝承/家運の盛衰と怪音/妖怪と幽霊譚/山田野理夫の怪談採集