催眠で呼び出された第二人格の悪心
どんな伝承か
著者が覚醒状態のまま問いただしても、山田は電車で浅草へ行き活動写真を見たという輪郭しか思い出せなかった。唆かす者は誰かと厳しく問うと「悪心です。私の悪心です」と答えたので、著者はただちに催眠状態に入れて悪心を呼び出した。悪心が現れると山田の態度は一変し、悄然としていたのが俄に傲然として非常に能弁になり、山田を三人称で呼んだ。悪心は、母から貰った十銭で入場券を買わせ、翌日は同級生から一円を借り出させ、その翌々日は万年筆を八十銭で売らせて浅草へ誘惑した顛末を語った。何館で何を見たか、その筋書も、金銭の用途も一銭単位まで記憶しており、第一人格が忘れた記憶をすべて保持していた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽・大正10年代~昭和初期(推定1920年代))
二重人格の諸事例(變態心理と犯罪)/アンセル・ボーン/フェリダの交替人格/変態心理と犯罪/催眠と記憶障害/憑依とされた病理の科学的説明