横浜での蓄音器の幻聴実験
どんな伝承か
公開の席での後催眠実験の例。著者がかつて横浜青年修養会で実験した際、被験者は催眠中に暗示どおり蓄音器の音を鮮やかに聞き取り、その幻聴に合わせて二三の歌まで上手に歌った。聴衆の数人から、覚めたあとにもう一度歌わせてほしいと注文が出たので、著者はまず実現しないだろうと思いつつ暗示を与えた。被験者は蓄音器の歌が聞こえるとしきりに独り言を言ったが、ついに歌い出すことはなかった。著者は、聴衆に笑われるのをはばかったためだとみている。
原典より
すると果して被験者には、その幻聴だけは鮮かに復活したと見えて、頻りに「蓄音器の歌が聞える、歌が聞える」とだけは獨り語してゐたが、遂にその歌を合唱することは敢てしなかつた。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。