人格が変わるたび浅草へ走った五日間
どんな伝承か
山田は著者の家に来なくなってから一時は非常に謹慎していたが、間もなく例の病気を復活させ、活動を見に行って夜遅くなることが度々あった。一週間前からは学校を休んでまで遊び回るようになった。その日は図書の参考書を買うと言って、電車賃のほかに三十銭を母から貰って登校する途中、ふと人格が変わって例の浅草へ飛び出した。持っている金を使い果たすと、浅草の近所に住む学友を放課後に訪ね、欺いて五十銭を借り出し、それも悉く使い果たした。夜遅く帰ったときには第一人格に戻っており、翌朝は返済のため五十銭を受け取って登校したが、電車通りまで行くとまた第二人格に変わって浅草へ飛び出した。これがちょうど五日間続いたという。
原典より
電車通りまで行くと、彼は再び第二人格に變つて淺草へ飛出した。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。