松坂屋の横町に浮かんだ大人魂
どんな伝承か
東京に生まれ十二で修業に出た語り手は、十四の秋に久しぶりの帰郷を果たし、知人の家々へ挨拶に回った。下谷数寄屋町にいた松葉屋のおいねという姐さんの宅で馳走になり、上方の話に興が乗って辞したのは十時前後である。折詰を提げ、松坂屋の先から鉄道馬車に乗ろうと歩いていると、明るい横町で不意に頭上がヒューッと鳴った。首をすくめて見上げた先に、焼酎の炎のような青白く黄ばんだ火が、差し渡し一尺余りの大きさで浮かんでいる。声も出ないまま無我夢中で家まで走り、気づくと折詰は失せていた。古狸の仕業だろうと語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。