道具が躍り出す芝三田四国町の一夜
どんな伝承か
明治二十三年九月のはじめ、宮地赴武は七歳の長男と十歳の長女を連れて芝三田四国町二番地へ移った。その月は何事もなかったが、十月十日を過ぎたころから夜ごと怪異が始まる。煙草盆や火鉢がひとりでに揺れ動いて天井へ吊り上がり、台所の米櫃や擂鉢、鍋釜や茶碗までが生き物のように跳ねて戸棚へ上り、雪隠へ飛び込んだ。寝ている家族の頭上からは米や灰が降る。父は枕元に鉈と出刃を備えたが、その刃物までが躍り出して部屋を飛び回った。縁の下で按摩の笛が鳴り、戸障子が拍子を取って鳴ることもあり、ついに高輪警察署へ届け出て祈禱者を招いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件