豪雪で隔離された廃村の犠牲者と深夜の足音
どんな伝承か
弓削和夫は渓流釣りに夢中だった頃、京都北部の由良川上流、支流の八丁川へアマゴ釣りに通った。京北町を抜け、八丁林道の峠を越えて少し下った所で車を止めて仮眠していると、午前零時過ぎ、大勢がそろった足並みで車のすぐ脇を通り過ぎていく足音で目が覚めた。外は真っ暗で何も見えず、ライトをつけると足音はぴたりとやんだ。翌朝出会った山仕事の人は、自分はその足音を聞いたことはないと前置きして、この上には木こりの村があり、八幡様や分校もあってにぎわっていたが、昭和九年の大雪で孤立し、村を捨てるまでに凍えや飢えで死んだ者もいたらしいと語った。釣り上がった先にあったその廃村は今は廃村八丁と呼ばれ、昔は弓削八丁という名だった。
原典より
いつものようにzzzzz・・・・・・と寝ていると、「ザッザッザッザッザッ」という足音で目が覚めた。—— 水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。