奥多摩湖の南岸を歩いていた女
どんな伝承か
雨と霧に包まれた夜明けの奥多摩湖の南岸を、釣り人が次の場所を目指して歩いていた。三キロほど進んだ先から、ワンピースにパンプスという山中に不似合いな装いの、髪が肩より長い細身の女が歩いてくる。声をかけると、小さな声でもう帰ると答えたという。三年後、同じ湖で水死体の第一発見者に居合わせた際、居合わせた警察官にその話をすると、警官は髪の長さや年格好まで言い当てたうえで、その女は自殺未遂を繰り返した末に七、八年前に亡くなっていると告げた。数が合わないと訴える釣り人に、警官は会ってしまったのだと言った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ・2000年代初期(推定))
釣り人の実話水辺怪談アンソロジー第2集。南紀白浜三段壁で声をかける白い服の女、伊豆の蛇石峠で車窓に張りつき身の上話を脳に直接響かせる女霊、箱根の戦後火葬場跡の足音、黒部峡谷の隧道の呻き、奥多摩湖畔に現れる自殺女性、豪雪で全滅した廃村の足音、渓流で足首を掴む手、河口湖の憑依と竜神の警告など、水辺の死者との遭遇譚を集める。