手のひらにトメの名を持つ子
どんな伝承か
明治三十年代ごろの人の話という。奥多摩に、世間から馬鹿トメなどと呼ばれる男がいた。生涯独り身で、兄か甥の家の居候のようになり、満足な仕事もできないので箒を作り、それを持って方々を掃除しては、いくらかの銭や品をもらって暮らしていた。五十を過ぎて急に亡くなったとき、次は普通の人間に生まれてこいと、親が手のひらにトメゾウともトメキチともつかぬ名を書いて土葬した。ほどなく近くの村で生まれた男の子の手のひらに、同じ字が読めたという。字はすぐに分からなくなったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。