暗い奈落へ吸い込まれた高熱の夜
どんな伝承か
年末から雪が降り続き、屋根も道もうず高く埋まった冬のこと。正月に風邪をひいた語り手は、かかりつけの医者が注射と内服薬を尽くしても一週間高熱が引かず、当時恐れられた粟粒性肺炎と診断された。ある夜、胸のあたりを泡粒のようなものが小さな音を立てて上下左右に這い回る感覚に襲われ、そのまま暗い奈落の底へずるずると吸い込まれていった。もう駄目だ、自分はこうして死ぬのだと叫びたかったという。数日後に正気づいたが、その間、医者は往診の道すがら、あの子は気の毒だと漏らしていたそうだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。