麻酔下の合掌と四次元の世界
どんな伝承か
昭和三十三年頃、結核で国立療養所紫香楽園に入院した中村正子の手術に、従兄の国男が立ち会った。全身麻酔をかけられ手術台で数を数えていた正子は、不意に両手を胸の上で組んで合掌する。医師は妙なことをすると言い、指をほどいて体の脇へ戻した。四時間余りの肺切除を終え、麻酔から覚めた正子は国男の顔を見るなり、いま四次元の世界へ行ってきたと語った。暗い道を進むうちに明るく輝く場所に出て、まだなすべきことがあるから帰れと告げられたのだという。正子は二年後、六度目の手術も及ばず世を去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。