もみあわせの石に並んだ白い手袋
どんな伝承か
奥多摩町に生まれ育った釣り人は、出勤前後の短い釣行を日課にしていた。その日は多摩川と日原川の合流点より上流、釣り人が「もみあわせ」と呼ぶ場所に入る。誰かが毎日のように竿を出す人気の区間なのに、その日に限って良型のヤマメが次々に掛かった。数日は誰も入っていないらしいと気づいて薄気味悪くなった頃、大石の上に外科手術用の薄い手袋が二人分、揃えたように置かれているのを見つける。集落へ戻る途中に会った老女は、女の子が自殺してからここには誰も入っていないと言った。手袋は検死のものらしかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社・2000年代~2010年代推定)
つり人社が編んだ釣り人の実話水辺怪談アンソロジー。瀬戸内や伊豆大島でのお盆の夜釣りの金縛り、自殺の名所の橋や三段壁で『釣れますか』と声をかけ足音なく消える白装束の女、小笠原父島の原生林に残る日本軍兵士の気配、河口湖のススキ林で消える話し相手、利根川支流で水中から船を掴む男、トーナメント中の憑依と機器故障の連鎖、藻に引き込まれる滝壺など、水辺で釣り人が遭遇した怪異を集める。