テント周辺の雑木林から響く鈴の音
どんな伝承か
二十年ほど前、渓流に魅了されていた井上聡は、仲間二人と新潟県の毛猛沢へ一泊二日の釣行に出かけた。アブに悩まされながら釣り上がり、川から少し離れた高台の砂利地にテントを張った。夜中、雨が降り出して誰も眠れずにいると、背後の雑木林から寂しげな鈴の音が響いた。遭難者かと思って大声で呼びかけたが返事はなく、しばらくすると今度はすぐ近くで鈴が鳴った。外へ飛び出そうとした瞬間、激しい雨が叩きつけて出られなかった。朝になって林を調べても人が入った跡も鈴も見当たらず、その日は一日中、木々の間から見られているような気配が続いたという。
原典より
耳を澄ましていると、また同じ場所から寂しそうな鈴の音が2度、テント後方の雑木林の中から聞こえてきた。—— 水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。