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焼け跡に笑い寄る白髪の老人

所在地東京都新宿区四谷
年代江戸期初秋
登場某の妻、医師の妻
出典妖怪の民俗学――日本の見えない空間

どんな伝承か

『世事百談』が伝える通り悪魔の一例。四谷のあたりに類焼のあったとき、そこに住む某の妻が、主人の留守に一人で縁先に出て煙草をのみ、夕暮れの景色を眺めていた。時は初秋、焼け跡のわずかな仮住まいで、あたりは大かた礎ばかりで草が生い茂っていた。秋風がざわと音を立てて吹いてくると、その草葉の中を、腰が二重に曲がった白髪の老人が杖にすがり、よろぼいながら笑いつつ、ただならぬ顔色でこちらへ来る。妻は心得のある者で、両眼を閉じ、これはわが心の乱れであろうと普門品を唱えて心を静め、しばらくして目を開くと、風に草葉がなびくばかりであった。ところが三、四軒隔てた医師の妻が、にわかに狂気したという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))

民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。

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