陰陽師が正太郎の全身に呪文を書き護符を戸ごとに貼らせ四十二日…
どんな伝承か
吉備の国賀夜郡庭妹の井沢庄太郎の一子正太郎は、酒に乱れ好色きわまりない男で、両親は吉備津の神主香央造酒の娘、磯良と結婚させた。だが正太郎は鞆の津の妓女袖となじんで京へ逃げ、磯良は重い病に臥して死ぬ。やがて袖も生霊にとりつかれて死に、正太郎は林の裏の小さな萱屋で青ざめた磯良の姿を見て気を失う。彦六に連れられて占わせると、陰陽師は死霊の怨みのためその命は旦夕にせまっていると告げ、正太郎の全身に古い字体で書きつけ、朱で書いた護符を戸ごとに貼らせて四十二日の物忌みを命じた。その夜から『あなにくや、ここにたふとき符文を設けつるよ』という声が聞こえ、鬼は夜ごと家を揺すり屋の棟で叫んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)